第二次大戦における英雄的な戦いは数多くあるが、質量ともに圧倒的に勝る敵に勇敢に立ち向かった物語の典型的な例のひとつが、時代遅れの複葉爆撃機フェアリー.フォックスを駆って襲いかかるドイツ空軍を迎え撃ったベルギー空軍である。 フォックスが初めて登場したころはいろいろな面で画期的な機体であった。 他の航空機メーカーは争ってこの後を追ったのであるが、1940年の時点では遠い昔のことであった。 フォックスが初飛行した1925年ではフォックスの流線型の機体はそれまでには見られない流麗なもので、カーチスD.12エンジンを装備して、その速度はいかなる単座戦闘機より速かったのである。 まだ第一次大戦後の軍縮時代のことで財政難であったイギリス空軍からフォックス1型として28機だけを受注した。 1929年にエンジンをロールスロイス ケストレルに換装し、徹底的に設計をやり直したものがフォックス2型として登場した。 1型では主として木製構造であったのが、2型では金属製になった。 しかし整備が画期的にやりやすいホーカー社のハートがイギリス空軍に正式採用となったため、フォックスの製品生命はこれで終わりかと思われたが、ベルギー空軍が旧式化していたブレゲ-XIXの代替としてフォックスを発注したのである。 ベルギー政府の要求でベルギー内に工場を設立し、そこで組み立てることになった。 改良型が次々と設計され、最終の8型は1939年5月まで作られた。 1940年、ドイツによる侵攻が始まったとき、フォックスの各型合わせて40機が配備されていたが、戦闘の初日の朝、30機のフォックス部隊はメッサ-シュミットBf-109による空襲を迎え撃ち、3機を失った。 5月18日の時点ではベルギーに残っている航空部隊はフォックス部隊のみになり、結局延べ65機が出撃したものの勇戦むなしくまたたくまに一掃されてしまったのである。
形式: 偵察兼戦闘機 エンジン:イスパノ.スイザ12Ydrs 液冷12気筒 860馬力 武装:7.7mm固定式機関銃1挺 7.7mm 旋回式機関銃1挺、 最大速度: 365km/時(高度4,000m) 上昇時間: 6分30秒(5,000mまで) 上昇限度: 11,200m 航続距離: 600km 自重: kg、全備重量: 2,245kg 全幅: 11.58m 全長: 9.17m 生産台数: 245
Elke C. Weal “Combat Aircraft of World War Two”, Arms and Armour Press, London 1977
William Green “War Plane of The Second World War Vol.7” Doubleday & Company, 1960
Bernard Fitzsimons ed. “The Illustrated Encyclopedia of 20th Century-Weapons and Warfare”
MACH 1 (l’encycropedie de l’aviation) Vol.4 Editions Atlas
Peter Lewis “The British Bomber since 1914” Putnam 1967
Peter Lewis “The British Fighter since 1912” Putnam 1965