第二次大戦前に設立され、多くの練習機の製造などで知られるマイルズ社の社長ジョージ.マイルズは航空母艦の搭載機が着艦失敗で飛行機とパイロットが失われる事故の多発に深い関心を寄せていた。 彼はその事故の多発は着艦時のパイロットの視界不良が原因であると考えていた。 その改善策として操縦席を機首に置き主翼は尾部に、小さな水平尾翼は機首に持ってくるいわゆるタンデム型の飛行機の開発を始めたのである。 設計案を提示されたイギリス空軍はあまりにも従来機と違う機体設計に首をたてに振らなかったが、マイルズ社は自主プログラムとして製作をすすめた。
従来とは変わった形態の機体の妥当性を確認するために5/8の大きさの機体が製作され1943年7月に初飛行した。 操縦者は社長のジョージ.マイルズである。 テスト結果は良好で、悪いくせもないことが判明した。
戦時中は飛行機の設計製造は空軍省の完全なコントロール下にあり、マイルズ社が勝手に本機を作って飛行させたことに空軍省では叱責する手紙を送ったが、良好な飛行データを見せられて係員が派遣された。 彼の報告が好意的であったのでイギリス空軍省は開発を続けることを認め、M.39Bの購入契約を結んだ。 マイルズ社は試験を続けデータを積み上げる一方1944年初め改造型の提案を行った。 しかし空軍のテスト機関で飛行実験を続けていた一号機は2回も事故を起こし、原因はマイルズ社の設計が悪かったわけではなかったが本計画はキャンセルされてしまった。 当時はすでにデハビランド.モスキートなどが稼働しておりこれ以上は必要なしと判断されてしまったのである。
形式:高速爆撃機 エンジン: デハビランド メジャーIC 液冷140馬力(2基) 最大速度:164km/時(海面) 失速速度 95km/時 上昇力:5.6m/秒 自重:1,091kg 全備重量:1,270kg 全幅:11.43m 全長:6.76m 生産台数:1
William Green “War Plane of The Second World War Vol.5” Doubleday & Company, 1960
Chris Bishop ed.“The Complete Encyclopedia of Weapons of World War 2”, Prospero Books, 1998
Peter Lewis “The British Bomber since 1914” Putnam 1967
Owen Thetford “Aircraft of the Royal Air Force 1919-1958”
Air Classics, Vol.21 No.3 March 1985