イギリス空軍でもっとも大量に生産された爆撃機であって、第二次世界大戦の最初から最後まで生産されつづけた名機である。 延べ出撃回数は18万回にものぼると記録されている。 設計者ウォリスはイギリス空軍仕様B.9/32に応じた双発爆撃機の開発にあたって、単発機ウェズリーで実績のあるジオデテイック構造を採用した。 これは現代のドーム球場の屋根のようなものに採用されている鳥かごを思わせる構造で、軽量でじょうぶであるということで実績があった。 エンジンはブリストル.ペガサス空冷エンジン(825馬力)2基である。 初飛行は1936年6月。 他社の提案にくらべてもっとも将来性があると判断されただちに大量の量産命令が下された。 生産型のウエリントンI型は1938年初めより姿を現した。 エンジンは1,000馬力のペガサスXVIIIで機首と尾部に二連装の7.7mm機関銃銃座が設けられ、胴体後部の両側に7.7mmブローニング機関銃1挺ずつが備えらていた。 爆弾槽には2,000kg以上の爆弾を搭載でき、戦争の当初2年間イギリス空軍の主要爆撃機となった。 しかし戦闘機の護衛のない爆撃行は自殺に等しいことが判明しもっぱら夜間爆撃に使われた。 ジオデテイック構造の機体はふつうなら破滅的なほどの損害を受けても基地まで帰ってこれるほどの頑丈さを示し絶大な信頼をよせられるにいたった。
戦争後半は爆撃部隊の主体はアブロ.ランカスターなどの4発大型機に移り、ウェリントンはもっぱらパイロット訓練、物質や兵員の輸送などに使われた。 1940年1月には少数機ではあるが、機体の下に巨大なコイルをつけ、海面すれすれに飛行して浮遊する機雷を爆発させて除去するという危険きわまりない任務についたこともある。
さまざまなエンジンが搭載された型が作られたが1942年以降の主流はブリストル、ハーキュリーズ(1,375~1,675馬力)搭載のもので、4発の大型爆撃機にひけをとらない爆弾搭載量を持ち戦争最後までドイツ爆撃の一翼をになって使われたのである。
またV1ロケットを搭載したハインケル爆撃機の侵入に対抗するモスキート夜間戦闘機隊を誘導するために、ウェリントンの搭載能力と頑丈な機体を生かしてレーダーを搭載して警戒させたこともある。
ウェリントンは1953年に至るまで訓練などに使われている。
形式: 中型爆撃機 エンジン:ブリストル.ペガサスXVIII 空冷1,000馬力 2基 武装:7.7mm旋回式機関銃4挺 7.7mm旋回式機関銃2挺 爆弾:2,041kg 最大速度:378km/時(高度4,724m) 上昇速度:341m/分 上昇限度:5,486m 航続距離:4,104km 自重:8,431kg 全備重量:12,928kg 全幅:26.28m 全長:19.68m 生産台数:11,462
Elke C. Weal “Combat Aircraft of World War Two”, Arms and Armour Press, London 1977
Enzo Angelucci & Paolo Matricardi “World War 2 Airplanes”, Rand McNally, Chicago 1978
Bernard Fitzsimons ed. “The Illustrated Encyclopedia of 20th Century-Weapons and Warfare Vol.22”
Chris Bishop ed.“The Complete Encyclopedia of Weapons of World War 2”, Prospero Books, 1998
Enzo Angelucci & Paolo Matricardi “Combat Aircraft of World War 2 1933-1937”