せっかく優秀な性能を持ちながら政策の変更、開発資金不足その他の理由で大量生産にまで移らず消えてしまう航空機がときとしてある。ホワ―ルウインドやボーファイターと同じ時期に開発された単座双発戦闘機グロスターF.9/37はそのような機体のひとつであった。 戦時の環境を考慮し、半熟練労働者でも作れ、工場を分散して生産が可能なように設計され、しかもきわめて優れた運動性を持っていた本機はテスト飛行の初期段階での事故がなければ大量生産に入っていたであろうという優秀機であった。 イギリス空軍仕様F.9/37は4連装銃座を備えた双発複座戦闘機として出された。 その後単発のデファイアント戦闘機の採用によりこの仕様は取り消されたが、グロスター社は銃座の代わりに機首に機関銃を装備した双発戦闘機を提案した。 これが採用され2機の発注を受けた。 初飛行は1939年4月、トーラスエンジンを搭載して行われ、当時での最良の運動性と安定性を持っていると評価された。 しかし7月の公式テスト中、着陸時の事故により機体は大破し修理のためグロスター社に送り返された。 最初に搭載したトーラスTE/1エンジンがトラブル続きだったため、トーラス IIIsエンジンが装備された。 このため馬力が当初の1,050馬力から900馬力に低下し、1940年春に再開されたテストでは最大速度が576km/時から531km/時に落ちてしまった。 試作2号機はロールスロイス.ぺリグリンエンジン(885馬力)を装備して1940年月2月に飛行し、最大時速528kmを記録した。 おりから出されていたロールスロイス.マーリンエンジン装備の双発戦闘機の仕様、F.18/40に適合すべく改良が計画されたがモックアップ段階以降にまで進むことはなく、結局潜在的には優れた特性を持った本機は型式名を与えられることなく終わった。
形式: 双発単座戦闘機 エンジン:ブリストル.トーラスTE/1 空冷1,050馬力 2基 最大速度:576km/時(高度 4,572m) 海面上昇率 619m/分 上昇限度:9,144m 自重:4,008kg 全備重量:5,273kg 全幅:15.24m 全長:11.28m 武装:20mmイスパノ.スイザ機関砲2門、7.7mmブローニング機関銃4挺 生産台数: 2
William Green “War Plane of The Second World War Vol.2” Doubleday & Company, 1960
Peter Lewis “The British Fighter since 1912” Putnam 1965