ホーカーハリケーン Mk.1 

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モデルは Revell製 1/72

数ある軍用機の中でももっとも輝かしい実績を持つハリケーンはイギリス空軍の始めての近代的な単葉戦闘機であり、水平飛行で始めて時速が480kmを突破した戦闘機でもあった。 ドイツのメッサ―シュミット Bf-109Eには速度、上昇力の点では及ばなかったが、優れた運動性と少しくらい撃たれてもびくともしない頑丈さ、群を抜いた射撃安定性はバトルオブブリテンでは中核となる働きを示した。 当時のイギリス戦闘機隊の2/3はハリケーンで占められていたのである。  ハリケーンの設計はホーカー社の主任設計者シドニー.カムによって1934年に始められた。 カムは当時開発中であった強力なロールスロイスエンジンPV-12(後の有名なマーリンエンジン)を搭載した近代的な戦闘機を目指したのである。 軍からの承認は得られなかったが、ホーカー社は自主開発として1934年10月から作業を開始した。 990馬力のマーリンCエンジンを搭載した試作機の初飛行は1935年11月に行われ、直ちに軍による公式テストに入った。 テストの結果は満足すべきものであった。 高度5,000mで時速500kmを超え、ホーカー社は軍からの量産命令を待たずに1,000機の生産準備に入った。 軍からの正式な発注は1936年6月にあり、エンジンがマーリンIからマーリンIIに変わったため若干の遅れはあったがハリケーンの量産第一号機は1937年10月に飛行し、12月には第一線への就役が始まった。 ハリケーンの構造そのものは複葉機時代と変わることがなかった。 機体全体に渡って羽布張りで初期の機体は防弾はなにも考慮されてなかった。 1,030馬力のマーリンIIエンジンとワッツ2翔固定ピッチプロペラを装備したハリケーンI型は高度5,000mで時速509kmを出し、海面上昇率は625m/分であった。 後にエンジンはマーリンIII、プロペラはロートルの3翔定速回転プロペラに替わり、武装は主翼に取り付けられた7.7mmブローニング機関銃8挺でこれが標準となった。 また操縦席の防弾板、防弾型の風防も取り付けられた。 生産力増強のため1939年10月からグロスター社でも生産が行われ、3,774機作られたハリケーン1型のうちほぼ半分はグロスター社で作られた。 ハリケーンは外国からも注目を浴び、緊迫する当時の国際情勢と緊急に戦闘機を必要とするイギリスの国情からすると不思議とも思えるが、外国にも輸出された。 最初の顧客はユーゴスラビアで24機を発注するとともにライセンス製造権を取得した。 1941年4月、20機ばかりが完成した時点でドイツによるユーゴスラビア攻撃が始まってしまった。 ユーゴスラビアは当時38機のハリケーンを所有しており、勇敢に戦ったが、数日にしてドイツの地上軍がハリケーンの基地に迫り、霧のため脱出できなかったハリケーンはすべて自分達の手で破壊された。 ハリケーンの1機は比較のためドイツのDB601Aエンジンを取り付けてテストされ、マーリンエンジン装備のものより優れていると評価された。 イランにも数機が輸出されたほかルーマニアが12機、トルコが15機購入している。 またベルギーも20機を購入したほかライセンス生産契約を結んでいる。  第二次大戦勃発時にはイギリスの18の戦闘機部隊がハリケーンで装備されており、このうち4つの部隊がフランスに派遣された。 1940年5月、ドイツによるフランス侵攻が始まるとさらに8つの部隊がフランスに送りこまれた。 これらのうち75機が失われ、120機が損傷を受け放棄せざるをえなくなった。 これはイギリスの全戦闘機隊の1/4にもあたる戦力であったが、ホーカー社の懸命の努力のおかげで生産力は上がり、バトルオブブリテンの時点ではイギリスの51の戦闘機部隊のうち32の部隊がハリケーンで装備されていた。 ハリケーンは速度の点でメッサ―シュミットには劣ったためもっぱら爆撃機の攻撃に専念し、メッサ―シュミットにはスピットファイアがあたる戦法をとった。 この目的にはハリケーンは射撃精度の良さで絶好の役割であった。 1940年8月にはマルタ島に派遣され同島攻防戦に活躍し、またアフリカ戦線にも送られている。 一部はカタパルト発射用に改造され、輸送船から発射しU-ボート攻撃やフォッケウルフ FW-200 による爆撃阻止のために使われた。 これはカタパルトで発射された後、海上に不時着してパイロットだけが艦艇に救助されるという片道作戦であった。 その他にも航空母艦搭載用に改造され、シーハリケーンとしてマルタへの輸送船団護衛に大活躍をした。 折りたたみ主翼の本格的な艦上機タイプも検討されたが、実現にはいたらなかった。  

 
性能諸元(Hurricane Mk.1)

形式: 迎撃戦闘機   エンジン:ロールスロイス.マーリンII 液冷1,030馬力   武装:7.7mm 機関銃8挺   最大速度:418km/時(海面) 496km/時(高度 3,048m)  上昇時間:4分15秒(3,658mまで)  上昇限度:10,180m   航続距離:845km   自重:2,151kg   全備重量:2,820kg   全幅:12.19m   全長:9.55m   生産台数:14,232(各型合計)

参考文献

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