1939年夏、ドイツにおける高高度飛行用の与圧式キャビンの技術は十分実用に足ると判断した空軍当局は新しい高高度爆撃機の仕様を発表した。 当時開発途上にあった新型エンジン、ユンカ-ス.ユモ 222またはダイムラー.ベンツDB604を2基搭載、従来機より抜きん出た高性能とリモコン操作の防御火器を備える要求であった。仕様はアラド、ドルニエ、フォッケウルフ、ユンカ-スの各社に出され、結局ユンカ-ス JU 288とフォッケウルフ FW191が選ばれた。 フォッケウルフの設計チームはただちに作業を始めたが、搭載予定のユンカ-ス.ユモ222エンジンが間に合う見込みがないため、当時もっとも強力であったBMW801空冷エンジンを搭載することになった。 2機の試作機の製造は1940年後半に始まり、翌年初頭に飛行テストがはじめられた。 FW191は中翼型で流麗なスタイルを持ち、ドイツ機特有の乗員全員を機首に収容し、燃料タンクは主翼付け根部分に設けられた。防御火器は機首の7.9mm機関銃2挺、胴体後方上部と下部に20mm機関砲1門と7.9mm機関銃2挺ずつ、さらにエンジンナセルの後部にも7.9mm機関銃2挺ずつが備えられた。 FW191のきわだった特徴はすべてのコントロールを電気式で行ったことにある。そのため至るところに小型モーターがあふれ、空飛ぶ発電所のあだ名をたてまつられた。この電気式コントロールはドイツ技術局が開発したもので、フォッケウルフ社としては、機構が複雑で信頼性が低下するし、ただ一発の被弾でコントロールが不能になる可能性があるという理由で反対していたものである。果たして飛行テストが始まるとコントロール機構にトラブル続出であった。 さらにエンジンの馬力不足は覆いがたく10時間の飛行テストの後、信頼性の高い電気式コントロールシステムと高馬力のエンジンが開発されるまで設計は中断ということになった。 1942年後半に入り、当初搭載予定であったユモ222エンジンが使えるようになり、フォッケウルフ社の要求が認められて油圧式コントロールにした試作機が完成した。しかしこの機体も依然として馬力不足で性能は失望させるものであった。 種々の改良が試みられたものの、結果はかんばしくなく1943年終わりまでにはすべての開発は中止されてしまった。
形式: 中型爆撃機 エンジン: ダイムラー.ベンツDB610A液冷24気筒2,870馬力2基 最大速度: 629km/時(高度 9,450m) 巡航速度 486km/時 航続距離:3,840km 海面上昇率 457m/分 上昇限度:15,550m 全備重量:25,333kg 全幅:26.00m 全長:19.63m 武装:20mm旋回式機関砲4門、13mm 旋回式機関銃4挺、爆弾2,000kg 生産台数: 6
William Green “Warplanes of the Third Reich” Military Book Society, London 1970