複葉で固定脚、外見だけで見ると第二次大戦の前に既に旧式化しているような本機が戦争前半には目標への急降下精密爆撃に、地上機銃掃射にと陸軍との共同作戦で信じられないような活躍を見せた。 Ｈｓ１２３はドイツ最初の急降下爆撃機として、第一次大戦時の戦闘機エースのエルンスト．ウーデット将軍の強力な指導のもとに１９３３年に開発が始まった。 １９３１年、アメリカを視察旅行したウーデット将軍がアメリカで行われていた急降下爆撃の実演に感銘を受けたのである。 初飛行は１９３５年５月８日。 単座複葉で胴体後部と翼可動部以外はすべて金属製。 空気抵抗を増大させる上下翼間の補強索を廃し、コンパクトにまとまった機体にウーデット将軍みずから操縦するという惚れ込みようであった。 エンジンはアメリカのプラットアンドホイットニーのホーネットエンジンを国産化したＢＭＷ１３２Ａ（650馬力）。 その年６月に始まった公式テストで急降下したあとの引き起こしで試作機が空中分解するという悲劇的事故が起こったが、改良型は無事テストを合格した。 エンジンに燃料直接噴射装置付きのＢＭＷ１３２Ｄｃ（880馬力）を搭載した量産型が直ちに生産に移され、１９３６年なかばから第一線に配備され、ドイツ最初の急降下爆撃隊となった。 その年の１２月、５機のＨｓ１２３が市民戦争下のスペインに送られ急降下爆撃の正確さと陸上部隊の手足となって行う地上攻撃の有効性を証明した。 この活躍に魅せられたスペインのファシスト軍は直ちに１６機のＨｓ１２３を発注した。 しかしドイツ空軍はこの事実を評価せず、急降下爆撃機は新型のＪＵ８７スツーカに統一することを決定し、Ｈｓ１２３の生産は１９３８年秋終了した。 　 第二次大戦勃発時にはほとんど訓練用に退いていたが、一部隊に残っていたＨｓ１２３部隊は１９３９年のポーランド侵攻作戦、翌年のフランス、ベルギー侵攻に参加し大活躍をした。 その働きを賞賛した機甲部隊指揮官グデリアン将軍の提言がようやく上層部に届き、すぐ廃止されるはずだったＨｓ１２３部隊はさらに存続することになった。 操縦性の良さ、高射砲の直撃弾を受けてもなんとか基地にまで戻れる頑丈さは伝説的にもなりパイロットは本機に絶大な信頼をおいていた。 東部戦線で天候が悪く飛行場がぬかるみと化して、Ｂｆ１０９や新型のＨｓ１２９などが発進不可能になってもＨｓ１２３は出撃を続けたのである。 １９４３年１月にリヒトホーヘン将軍がＨｓ１２３の生産を再開することを主張したが、時既に遅く製造用の治具などは廃棄されていたため、訓練学校などドイツ全土にあった機体を集め東部戦線に送り込んだくらいである。 常に最前線にあって奮闘したこの特筆すべき航空機は補充が無いまま１９４４年なかばにはすべて消耗しつくして姿を消した。