ユンカ－スJU８６は同時期に開発されたハインケルHE 111と同じく最初は民間輸送機として設計された。　１９３４年に出現した当時はヨーロッパでも技術の最先端をいくものであった。　設計者のチンデルは従来のユンカ－ス社の特徴ともいうべき波板構造をやめ普通の滑らかな表面の外形を採用し、主脚は引っ込み式の近代的な構造になった。　試作第一号機は設計開始から５ヶ月という記録的な短期間で完成し１９３４年１１月に初飛行した。　エンジンは６気筒液冷式のユモ 205デイーゼルであった。　デイーゼルエンジン装備のD-1型はドイツ空軍に配備されドルニエD0２３、ユンカース Ju 52と置き換えられた。　しかしデイーゼルエンジンは燃料効率は抜群に良く民間機としては好都合なものの馬力が少なく軍用としては不向きであった。　１９３７年、５機がテストケースとして市民戦争下のスペインに送られたが共和国軍の複葉戦闘機にさえ簡単にやられてしまうことが判明し、より強力なBMW空冷エンジンを装備したE型が登場した。　E型はD型とともにポーランド侵攻作戦に参加したときがもっとも華やかな時であった。　１９３９年には過吸器付のデイーゼルエンジンと与圧式キャビンを備えた高高度型P型を開発、ロシア戦線で偵察機として使われた。　さらに翼端を長くしたP型も作られ１９４１年からイギリス上空の偵察に使われたがついにスピットファイアに捕捉撃墜されるに及んでこの偵察は中止になった。