絶望的な情勢には絶望的な手段が生まれる。　第二次大戦も終盤に入り連日連合軍の圧倒的な爆撃にさらされるようになったドイツは通常の手段ではこれを食い止めることは不可能であることを認めざるをえなかった。　このようなときに設計者はエリック．バッヘムがひとつの案を出した。　垂直に上昇するロケット戦闘機を敵爆撃隊の侵入経路に配置しておき敵機が上空を通過しようとするとき垂直に上昇、機首に装備したロケット弾で攻撃、その後旋回して体当たり攻撃をする。　体当たりの直前に座席の射出装置のボタンを押してパラシュートで脱出するという計画であった。　このようなアイデアは１０３９年に後年アメリカでロケット開発の中心になったフォン．ブラウン博士によって提案されていたが危険すぎるということで棚上げになっていたものである。　実験の結果脱出装置は簡単にはいかないことが分かり、体当たり攻撃は断念された。　設計の最重要点はアルミニュームなどの戦略物資を使わずしかも熟練者に頼らずとも簡単に作れるということに置かれた。　そのためエンジン回りと操縦席の防弾板以外の機体構造は木製であった。 ロケットエンジンはパイロットのすぐ後ろの胴体に収納された。　発射に当たっては長さ約１０ｍのほぼ垂直に建てられた発射レールが使用され、機体の胴体後部に４基の補助ロケットがつけられた。　数回の無人機テストの後、１９４５年２月ハインケルHe111爆撃機に曳航され有人による滑空テストが行われ、パイロットは機体の操縦性はきわめて良好であると証言した。　続いて有人のロケット発進テストが行われたが第一回目発射直後にキャノピーが吹き飛びそれがパイロットを直撃したらしく宙返りして墜落、パイロットは死亡した。　しかしパイロットの志願者には事欠かずその後３回の有人発射テストは成功であった。　４月までに７回の有人テストを含め３６回のテストが行われた。 実行プランは敵爆撃隊が近づいてくるとBa349を発射、最初はレーダーと無線で自動コントロールし、敵機が２ｋｍくらいに接近してきたところでパイロットが手動コントロールに切り替えてロケット弾を発射する。　その後パイロットは脱出、同時にロケットエンジンも切り離され、パラシュート降下させ再利用するというものであった。 最初の１０機のBa349が実戦配備されたがアメリカ地上軍が接近してきたため廃棄を余儀なくされてしまい実戦に参加することはなかった。