1935年の初飛行以来10年にわたってドイツ空軍の中心的存在になった伝説的な名戦闘機Bf109シリーズの第一号機である。 ドイツ戦闘機としては始めての引っ込み脚、密閉式風防を備え、当時使用可能な最強力のエンジンを装備、可能な限り小型の機体にするという方針で設計された。
Bf109は1934年、ドイツ空軍から出された仕様に応じて設計が始められたものであるがその誕生は至難をきわめた。 まずウィリー.メッサ-シュミット博士が創立したバイエルン飛行機製造会社は1933年当時、わずか82名の社員を擁する小さな会社であり、しかも戦闘機の設計の経験のない同社が経験豊かなハインケル、アラドといった競合相手にはとても勝ち目はないと当局からも辞退を勧められていたほどであった。 なにより悪いことに技術開発責任者であったエアハルト.ミルヒがメッサ-シュミットとは仇敵ともいうべき間柄であったのである。 それでもメッサ-シュミットの必死の運動が実って1934年に行われる航空コンテストに参加するために6機の試作機の受注に成功した。 メッサ-シュミットは戦闘機設計の経験こそないものの、それまでにBf 108で当時の最先端を行く全金属製の近代的航空機を設計していたし、しかもアラド社で高速機の経験豊かな技師、ウオルター.レテルを主任技師として迎えいれることに成功した。 試作に成功しても量産オーダーはないとさえ言われていたメッサ-シュミットであるがそれにもめげず開発を進め、1935年8月には3機の試作機が完成し初飛行を待つばかりになっていた。 その時第一次大戦における戦闘機エースであるエルンスト.ウーデットの訪問を受けたのである。 ウーデットはBf109をちらりと見ただけで「こんなものが戦闘機になるか」といい放った。 複葉で開放型のコクピット、固定脚に慣れた保守的な戦闘機パイロットにとってはBf 109はあまりに近代的であったのである。それでも数年後にはウーデットはBf 109の熱烈な信奉者になっていた。 初飛行は1935年9月である。 このときは予定していたユモ210エンジンが間に合わずイギリスのロールス.ロイス ケストレルエンジンを搭載し2翔の木製プロペラを駆動していた。 社内テストの後空軍に引き渡され公式テストが始まったが、先のウーデットと同じく旧式の複葉機に慣れたテストパイロットは高翼面荷重のため着陸速度が速いことやもろもろの近代的機能が不満であった。 しかしテスト飛行では競合相手のハインケルHe 112より27kmも速い時速464kmを記録したことが空軍関係者を印象づけBf109に対する評価は急速に高まっていった。 それでも多くのパイロット間ではBf 109が上昇力や急降下に優れていても主脚の間隔が狭く着陸時に困難があるBf109より、使いやすいHe 112の方が第一線戦闘機として適当であるとの意見が支配的であった。 Bf 109の2号機は1936年1月にユモ.エンジンを搭載してテスト飛行を開始した。 この頃イギリスのスピットファイアが量産命令を受けたという情報が入ったことやもろもろの改良を施した2号機の性能が評価されBf 109に対する評価は急速に高まり、さらにゲーリングの目前で行われた模擬空戦で1機のBf 109が5機のハインケルHe 51戦闘機を徹底的に圧倒したことが最後の決め手になってついにこの歴史的名戦闘機が生まれることになったのである。
形式: 単座戦闘機 エンジン: ロールス.ロイス ケストレル液冷12気筒695馬力 最大速度:470km/時 航続距離:700km 上昇限度:8,200m 自重:1,500kg 全備重量:1,900kg 全幅:9.87m 全長:8.65m 生産台数: 30,500以上(各型合計)
William Green “War Plane of The Second World War Vol.1” Doubleday & Company, 1960 Enzo Angelucci & Paolo Matricardi “World War 2 Airplanes”, Rand McNally, Chicago 1978 Bill Gunston “Fighting Aircraft of World War 2”, Prentice Hall Press 1988 Bernard Fitzsimons ed. “The Illustrated Encyclopedia of 20th Century-Weapons and Warfare Vol.4” Chris Bishop ed.“The Complete Encyclopedia of Weapons of World War 2”, Prospero Books, 1998 William Green “Warplanes of the Third Reich” Military Book Society, London 1970 Bill Gunston “Fighting Aircraft of World War 2”, Prentice Hall Press 1988