離陸した直後に驚異的な角度で上昇、大空での運動性、垂直に近い急降下から地表近くで急激な引き起こしと見るものすべてを驚嘆させた本機は1930年代後半の最高傑作機ともいうべき存在であった。 それもそのはず本機は後にFW190を設計して有名を馳せたクルト.タンク博士の最初の作品である。 ドイツ空軍は本土防衛用戦闘機の設計案の提出をアラド社、ハインケル社、ヘンシェル社とともにフォッケウルフウルフ社にたいして要求し、4社の設計機の比較テスト飛行は1935年春に行われることになっていた。 最初の仕様は本土防衛用戦闘機としてのほか高等練習機としても使え、エンジンはアーガス As10 空冷8気筒(240hp)を使用、7.9mm MG17機関銃を1挺備えるというものであった。 翌年の1934年、機関銃を2挺に増やし10kg爆弾3発を翼下にぶらさげることができるように変更された。 機体構造は自由であったのでタンクは単葉高翼型を選び、空気抵抗を極力減らすことに配慮がなされた。 胴体は溶接鋼管の骨組みに前部は金属、後部は羽布張りであった。 主翼は木製構造に羽布張りで前縁は3度の後退角を持ち左右別々に作って中央部で接続するようになっていた。
初飛行は1933年。 1935年に行われた競合他社との比較テストではアラドAr76,ハインケルHe74より性能では若干劣ると判定されたが、機体構造そのものの優秀性、運動性が別途開発中の主力戦闘機に近似しているとの理由で本機が選ばれ、量産に移るよう指示がなされた。
FW56は翼面荷重が高く初心パイロットには決して扱いやすい飛行機ではなかったが、いったん慣れると素晴らしい飛行特性を示した。
形式:単座戦闘機兼高等練習機 エンジン:アーガス As 10C 空冷8気筒 出力 240 hp 武装:7.9mm MG17機関銃1または2挺(携行弾数各銃250発) 最大速度 256km/時 巡航速度:243km/時 上昇率: 503m/分(海面) 上昇限度:6200m 航続距離:368km 自重:670kg 全備重量:986kg 全幅:10.55m 全長:7.65 m 生産台数:約1,000
William Green “Warplanes of the Third Reich” Military Book Society, London 1970 Ed.: David Donald “Encyclopedia of World Aircraft” Prospero Books 1999 Elke C. Weal “Combat Aircraft of World War Two”, Arms and Armour Press, London 1977