潜水艦搭載用航空機のアイデアは第1次世界大戦にさかのぼる。 元祖はハンザ.ブランデンブルグ W20である。 レーダーの無い時代にあっては獲物を探すのに航空機は絶大な威力を発揮する。 反面搭載航空機の発進、回収時には潜水艦は浮上せねばならず危険に身をさらすことになること、ただでさえ狭い潜水艦の中を航空機の収納のため多大なスペースを取られることなどの問題があり、各国の間でもこのアイデアは現れては消え、消えては現れていた。 第二次大戦に突入したときのUボートは比較的小型であったので航空機の搭載は不可能であったが、1939年大型Uボートの建造が計画されるに及びこのアイデアが浮上してきた。
1940年初め、アラド社に対してAr-231という型名で6機の試作発注がなされた。 エンジンはヒルトHM501 空冷6気筒、機体は小さく折りたためるようにするため全金属製で非常に簡単な構造であった。 右側の主翼は左側より低く段違いになって左翼が右翼の上に折り重なってたためるようになっており、フロートは取り外し可能で機体を分解したときは直径2mの筒の中に収納できた。 収納のための分解に約6分、再組み立てにも6分の時間しか要しないというスピードぶりであった。 4時間の飛行分の燃料を搭載し、偵察から帰ってきた飛行機を収容し、攻撃位置につく用意をするのに十分な時間が持てるくらいの距離まで進出できた。
1941年始めに初飛行したが、テストの結果は芳しいものではなかった。 しかも風速が10m以下でないと発進できず、そのうえ発進、収容にそれぞれ10分近く浮上せねばならないということで潜水艦の艦長にとっては歓迎すべきものではなかった。 同じ頃、この目的のためにオートジャイロ Fa330が飛行テストに成功、良好な結果を示したためにAr231の開発は中止された。
形式:単座潜水艦搭載用水上偵察機 エンジン:ヒルト HM-501 空冷6気筒 出力 160 hp 最大速度 170km/時 巡航速度 130km/時 上昇限度:3,000m 航続距離:500km 自重:834kg 全備重量:1,051kg 全幅:10.17m 全長:7.81m
William Green “Warplanes of the Third Reich” Military Book Society, London 1970 Ed.: David Donald “Encyclopedia of World Aircraft” Prospero Books 1999 William Green “War Plane of The Second World War Vol.6” Doubleday & Company, 1960 Enzo Angelucci & Paolo Matricardi “World War 2 Airplanes”, Rand McNally, Chicago 1978