1930年代なかばのドルニエ社の飛行艇は浅くて幅広の胴体、胴体下の小さい補助翼が標準になっていたが、1938年に登場したDo26では意外にも通常型の胴体設計に戻り、際立った新機軸は認められなかった。 しかし機体設計全体としては空力学的にきわめて洗練されておりこの種の航空機としてはもっとも流麗な曲線を持っていた。
設計が始められたのは1936年、ルフトハンザ航空会社がリスボンからニューヨークまでのノンストップ直行便を計画したときである。 翌年、ルフトハンザ社は3機のDo26を発注した。 初飛行は1938年5月である。 エンジンは4基のユンカース.ユモ205デイーゼル(600馬力)で3翔プロペラを駆動した。 試作機は直ちにルフトハンザ社に引き渡され、おりから発生した南米のチリ大地震に応じて医薬品などを届ける作業に使われ20,000km以上の往復飛行を行った。 2号機は1939年春に完成、ただちにルフトハンザ社に引き取られ、第二次世界大戦勃発までの半年間南米との郵便物輸送に活躍した。
世界大戦勃発後はドイツ空軍所属としてDo26の型式名を与えられ、長距離海上哨戒機として使われることになった。 そのために機首にはMG-151機関砲(口径20mm)一門と胴体後部に左右1挺ずつの7.9mm機関銃が備えられた。
第二次世界大戦ではDo26は、ノルウェー侵攻作戦で 狭いフィヨルドに着水して兵員や輸送を輸送する作戦に活躍した。 1940年5月着水しようとしたときイギリス戦闘機に襲われ1機が撃墜され、他の1機は強行着水したものの搭乗していた兵員とともにノルウェー側に捕獲されている。 合計で6機が生産されたがその後の生産はなく、修理用部品が尽きるとともにDo26の活動も消滅してしまった。
形式:長距離海上哨戒飛行艇 エンジン:ユンカース.ユモ205D 液冷 800馬力 武装:20mm 固定式機関砲 1門 7.9mm旋回式機関銃3挺 800kg魚雷1個 最大速度 327km/時(高度2,600m) 巡航速度 257km/時(高度4,000m) 航続距離 4,800km 上昇時間:16分30秒(2,000m) 上昇限度:4,500m 自重:11,300kg 全備重量:22,500kg 全幅:30.00m 全長:26.60m 生産台数: 6
William Green “Warplanes of the Third Reich” Military Book Society, London 1970
Ed.: David Donald “Encyclopedia of World Aircraft” Prospero Books 1999
Elke C. Weal “Combat Aircraft of World War Two”, Arms and Armour Press, London 1977