通常の飛行機と同じくエンジンによって回転するプロペラで前進し、主翼の代わりにローターを回して浮力を得るいわゆるオートジャイロというものは以前からあったが、Fl282は世界で初めて実用化されたドイツの単座ヘリコプターである。 設計はドイツ人のアントン.フレットナー、Fl282は1940年に発表されたFl265の改良型である。 エンジンはジーメンスSh14、7気筒空冷エンジンで胴体の中央部に配置されギアで2本の反対方向に回るローターを駆動するようになっていた。 胴体は鋼管の溶接で組み立てられ、その上に防水加工された羽布が貼られた。
ドイツ海軍も興味を示し対潜水艦哨戒として15機を発注、その後さらに30機が発注されている。 飛行テストは1941年に巡洋艦クルン甲板から行われている。
エンジン故障時には自動的にローターがフリーに回るようになり安全に着地できるようになっていた。 3枚式のローターも実験され、2枚式より回転がスムーズであるとの評価されたがそれ以上に進むことはなかった。
もともとの用途は物資の輸送や連絡であったが、ドイツ空軍は戦争が進むにつれて本機を戦闘用に使うことを考え始めた。 もともとは単座機であったが胴体後部にも偵察要員用の座席が設けられた型がB-2型として作られ、砲兵隊の弾着観測などに有効であることを示し、1945年には3機のFl282と3機のFa223からなる偵察部隊が編成されている。
悪天候下でも飛行性能が安定していることからドイツ空軍は本格的生産を計画しBMW社に1000機を発注したが、同社の工場はFl282を24機作ったところで連合軍の爆撃で破壊されてしまった。
形式: 小型ヘリコプター エンジン: ブラモ空冷160馬力 最大速度:150km/時(海面) 上昇率:152m/分 上昇限度:3,300m 航続距離:170km 自重:760kg 全備重量:1,000kg 全長:6.56m ローター長さ:11.96m 生産台数:24
Chris Bishop ed.“The Complete Encyclopedia of Weapons of World War 2”, Prospero Books, 1998
William Green “Warplanes of the Third Reich” Military Book Society, London 1970