ハインケルHe70はドイツにおける航空機設計にもっとも大きな影響を与えた飛行機のひとつでその洗練された流麗な機体設計はその後の標準ともなった。 1930年代始めに登場した本機はジュラルミン製のモノコック構造の胴体に空気抵抗の少ない沈頭鋲を採用、翼は木製で楕円形の形状はその後のハインケル機の特徴となった。主脚は主翼内に引き込まれ、エンジン冷却器は胴体内に引き込まれるようになっていた。
1931年、アメリカのロッキード.オライオンの出現に刺激されたルフトハンザ航空は同等の性能を持つ小型旅客機の計画を立てた。 ハインケル社とユンカ-ス社がこれに応じ、それぞれHe65とJu60として設計を進めた。 しかし両機ともまだ設計段階にあるうちにスイス航空がロッキード.オライオンをチューリッヒ、ウィーン間に運行させ始めたため、両社とも設計仕様の大幅な見直しを迫られた。 ユンカ-ス社はJu 60を改良していけば要求される性能を出すことができるとしたのに対し、ハインケル社はHe 70としてまったく新しい設計を始めた。 エンジンは当初使用していたアメリカのプラットアンドホイットニー.ホーネットエンジンからより強力なBMW VI6,0Zエンジンに換えられた。 初飛行は1932年12月のことであった。 1933年2月に完成した2号機はテスト飛行で時速374kmを出し翌月にはルフトハンザ航空に納入され、その後数々の飛行新記録を樹立した。中でも1トンの貨物を積んで100kmの距離を平均時速355kmで飛行したことである。 この速度はイギリス空軍の最新鋭機であったホーカー.フュ-り戦闘機より13%も速かったのである。当時水面下で再建中であったドイツ空軍がこれを見逃すはずがなく1934年にはHe 70Dが連絡機として納入された。 さらに本格的な爆撃機と偵察機のタイプがそれぞれHe 70EとHe 70Fとして発注を受け1934年秋から引渡しがはじまった。 He 70は当時のドイツ空軍戦闘機のハインケルHe 51より速かったが、高速の近代機に慣れてないパイロット達からは評判がよくなかった。 実戦参加の最初は1936年11月スペインの市民戦争でフランコ軍側に参加したコンドル軍団で偵察部隊に配備されたときで、高速を生かして政府軍側の戦闘機を容易に振り切ることができた。 He 70は1938年秋まで第一線に配備されていたが第二次大戦が始まるころには後方に退いていた。
形式: 軽爆撃機 エンジン:BMW V17,3Z空冷750馬力 最大速度:360km/時(高度 1,000m) 巡航速度 335km/時 航続距離:900km 上昇時間:2分30秒(1,000mまで) 上昇限度:5,500m 自重:2,360kg 全備重量:3,460kg 全幅:14.79m 全長:12.00m 武装:7.9mm 旋回式機関銃1挺、爆弾300kg 生産台数:306
Elke C. Weal “Combat Aircraft of World War Two”, Arms and Armour Press, London 1977 Bill Gunston “Fighting Aircraft of World War 2”, Prentice Hall Press 1988 Bernard Fitzsimons ed. “The Illustrated Encyclopedia of 20th Century-Weapons and Warfare Vol.12” Chris Bishop ed.“The Complete Encyclopedia of Weapons of World War 2”, Prospero Books, 1998 William Green “Warplanes of the Third Reich” Military Book Society, London 1970