川崎 三式戦闘機(キー61) 飛燕

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モデルは ファインモールド製 1/72

日本で唯一の液冷式エンジン装備の戦闘機である。 そのせいか1943年4月ニューギニアで初めて連合軍パイロットが飛燕に遭遇したときドイツのメッサ-シュミット Bf109と見まちがえたくらいである。 しかし事実はBf109のサンプルが日本に到着する半年前に飛燕は初飛行しており、純然たる日本の設計であった。 とはいってもドイツ人のフォクツ博士が1923年から10年間川崎航空機の設計の指導にあたっていたのであるから、その影響を受けていたことも間違いないであろう。  飛燕の開発命令は1940年12月に出された。 ちょうどその時川崎の明石工場ではドイツから技術導入を受けたダイムラー.ベンツ DB 601A エンジンの生産準備が行われているときであり、このエンジンが飛燕に搭載されることになった。 初飛行は1941年12月。 試作機は捕獲したカーチス P-40 やドイツの Bf109にくらべてほとんどの面で優れていることが分かった。  飛燕は三式戦闘機として正式採用され、最初の量産型は1942年8月に陸軍に納入された。 搭載エンジンは DB601A の国産版 ハー40 (離昇出力 1,175 馬力)であった。 生産のピッチは急速に上がり、1943年11月には月産100機になり1944年7月には254機を記録した。 1943年4月ニューギニア戦線に投入されて以後、あらゆる方面に登場するようになった。  最初の量産型は 7.7mm 機関銃2挺を胴体に、12.7mm 機関銃2挺を主翼内に搭載していたが、1943年8月からはドイツから購入したマウザー MG151 機関砲2門を搭載した型が登場した。   設計は川崎の土井武夫技師の手になるものですばらしいスタイルで操縦性もよく、しかも日本機には珍しい頑丈な機体を持ち急降下も苦にしなかった。 しかも日本戦闘機としては初めてセルフシーリング燃料タンクや防弾板も備えていた。 初めて登場したとき、英米のパイロットはいままで日本機にたいする常套手段であった、急降下で逃げる手がつかえなくなったのに驚いている。 ただ悩みはエンジンで戦争全期を通じて、この故障に悩まされ続けた。 戦争末期、エンジンを手慣れた空冷エンジンに換装して五式戦闘機としてよみがえり、その高性能を喜ばれたところから見ても分かるように、機体設計は一流であった。   イギリスのある雑誌にはオーストラリアのブリスベーンで捕獲された「飛燕」一型とスピットファイアVIIIとの比較テストの結果が掲載されている。 「2機が同時に滑走を始め、「飛燕」が先に離陸したが高度1500mに達して水平飛行に移ったときは、スピットファイアはすでに2400mの高度に達していた。 高度2100mから同時に急降下に入るとスピットファイアはやすやすと「飛燕」を抜き去った。」 こう書くといかにも「飛燕」が劣っているようであるが、「戦争後半になると材料の関係で日本機の品質低下が著しく、もし実力どおりの性能をだしておればこんな結果にはならなかっただろう。 「飛燕」は設計としては欧米のベストの戦闘機に匹敵する」とのコメントがつけてあった。

 
性能諸元(キ-61II)

形式: 単座戦闘機   エンジン:川崎ハ40 液冷1,175馬力   最大速度:592km/時(高度 4,860m)   巡航速度 400km/時   航続距離:1,100km   上昇時間:5分31秒(5,000mまで)    上昇限度:11,600m   自重:2,210kg   全備重量:3,250kg   全幅:12.0m   全長:8.75m   武装:20mm機関砲2門、12.7mm 機関銃2挺   生産台数:3,078

参考文献

辻 俊彦「零戦ーアメリカ人はどう見たか」芸立出版
Elke C. Weal “Combat Aircraft of World War Two”, Arms and Armour Press, London 1977
William Green “War Plane of The Second World War Vol.3” Doubleday & Company, 1960
Enzo Angelucci & Paolo Matricardi “World War 2 Airplanes”, Rand McNally, Chicago 1978
Bill Gunston “Fighting Aircraft of World War 2”, Prentice Hall Press 1988
Bernard Fitzsimons ed. “The Illustrated Encyclopedia of 20th Century-Weapons and Warfare Vol.15”
Chris Bishop ed.“The Complete Encyclopedia of Weapons of World War 2”, Prospero Books, 1998
Rene J Francillon “Japanese Aircraft of the Pacific War” Putnam Aeronautical Books 1988
RAF Flying Review
Rene J. Francillon “Japanese Aircraft of the Pacific War” Naval Institute Press