中島 四式戦闘機(キー84) 疾風

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モデルは ハセガワ製 1/72

 「ほっておけ。 そいつはフランク(疾風)だ」 これはアメリカの基地でレーダーに映った映像を見てしばしば交わされた言葉であった。 フランクとは「疾風」につけられたコードネームである。 戦争末期、沖縄基地ではときおり単機で侵入してくる日本機を、なかばおもしろ半分に飛びあがって迎撃するアメリカ戦闘機隊であったが、相手が「疾風」であれば捕捉するのがひじょうに難しかったからである。  イギリスの航空雑誌にはこう記されている。 「1944年8月に中国の藩口に出現した日本の新型戦闘機「疾風」はすぐに連合軍にとっては容易ならざる敵であることをみずから証明した。 「疾風」は従来の日本機に共通の欠点にありがちな脆弱さがまったくなく急降下に耐え、防弾も備えるすばらしい戦闘機であって、空襲下でこのような戦闘機を作り出した日本の航空産業は賞賛に値する。」  戦後の比較テストでも「「疾風」はアメリカのP-51HやP-47Dと速度はわずかに遅いが上昇力に優れ、運動性にいたってははるかに凌いでいる。 ただアメリカ戦闘機は急降下速度に優るため、態勢が不利になればいつでも離脱できる。 グラマンF6Fヘルキャットは運動性では優れるが、その他のすべての点で「疾風」に劣っている」と評価されている。  一式戦闘機隼が実戦で活躍しているころ航空本部はその後継戦闘機の開発を中島飛行機に指示した。 設計は小山技師の指導のもとに1942年4月に開始され、わずか11ヶ月後には第一号機が飛行した。 大量生産は1944年4月に始まり8月には中国に派遣され、シェンノート将軍指揮下のアメリカ第4空軍と戦い相手を驚愕させた。 日本機の特徴である胴体と主翼中央部を一体につくる構造で、沈頭鋲を採用していた。 武装は機首の12.7mm機関銃2挺と主翼の20mm機関砲2門であるが、その後の型では20mm機関砲2門、30mm機関砲2門装備のものもある。 組み立ての容易さにも多大の考慮が払われ組み立て工数は1式戦闘機隼よりも44%も少なかった。 わずかな期間で3,500機を超える生産ができたのもそのおかげである。  登場したときから疾風は日本陸軍最優秀機と目されていたが、泣き所はその信頼性にあった。 搭載していた誉エンジンは馬力当たりの重量、前面面積が小さく、カタログ上では世界最高のエンジンともいえるものであったがメンテナンスに名人芸を要し、とくに戦争末期には材料の品質、工作技術の低下がはなはだしく本来の性能を発揮することができなかった。 また主脚の強度不足で着陸時に主脚が折れる事故が頻発、結局あまりめだった活躍をすることができなかった。 アルミ合金の不足から立川飛行機の手により木製化の試みが行われた。 木製の疾風はKi-106と名づけられ、1945年7月に初飛行した。    

 
性能諸元(キ-84)

形式: 単座戦闘機   エンジン:中島 Ha-45空冷 1,900 馬力   最大速度:523km/時(海面), 631km/時(高度 6,120m)   巡航速度 445km/時   航続距離:2,167km   海面上昇率 1,155m/分   上昇時間:5分54秒(5,000mまで)   上昇限度:11,000m   自重:2,660kg   全備重量:3,890kg   全幅:11.24m   全長:9.92m   武装:20mm ホ-5 機関砲2門、12.7mm 機関銃2挺、爆弾500kg   生産台数:3,514

参考文献

辻 俊彦「零戦ーアメリカ人はどう見たか」芸立出版
Elke C. Weal “Combat Aircraft of World War Two”, Arms and Armour Press, London 1977
William Green “War Plane of The Second World War Vol.3” Doubleday & Company, 1960
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Bernard Fitzsimons ed. “The Illustrated Encyclopedia of 20th Century-Weapons and Warfare Vol.15”
Chris Bishop ed.“The Complete Encyclopedia of Weapons of World War 2”, Prospero Books, 1998
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Rene J Francillon “Japanese Aircraft of the Pacific War” Putnam Aeronautical Books 1988
Robert C. Mikesh “Japanese Aircraft 1910-1941” Putnam Aeronautical Books 1990
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Robert C. Mikesh “Broken Wings of the SAMURAI” Naval Institute Press, Annapolis, Marylandp
W. Green & G. Swanborough “Japanese Army Fighters World War 2 Fact Files”
航空情報編 「日本軍用機の全貌」
岡村純他「航空技術の全貌」原書房
“ Royal Air Force Flying Review “ Apr. 1957
“ Air International “ Jan. 1976
William Green “Famous fighters of the second World War” 1957
“ Air International “ Oct. 1976