中島 九七式艦上攻撃機(B5N2) 

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モデルは ハセガワ製 1/72

 1941年12月、日本海軍の真珠湾攻撃時点では97式艦上攻撃機(B5N)は疑い無く世界最高の雷撃機であった。 当時のアメリカのダグラスTBF,イギリスの複葉のソードフィッシュは性能的に問題にならなかったのである。  日本海軍の雷撃機の開発は1932年にさかのぼる。 この年海軍から出された「7試」仕様に応じて愛知、三菱、中島の3社が設計案を提出したがいずれも海軍の満足するところとならなかった。 旧式化していた92式攻撃機(B3Y)を置きかえるため海軍は「9試」仕様を発布した。 これに対して横須賀の第一海軍工廠の設計になるB4Y1が96式艦上攻撃機として採用された。 B4Y1はあくまでつなぎの機種であって、海軍はもっとモダンな機種の開発を目的として1935年、「10試」仕様を発布した。 この要求は全幅16m以下、主翼を折りたたんだ状態で7.5m以下、武装は800kgの魚雷または同量の爆弾に7.7mm機関銃1挺、最高速度は324km/時(2,000m)以上、航続時間最大7時間、乗員3名、エンジンは中島の光か三菱の金星のいずれかを搭載というものであった。 中島の設計チームが採用したのは全金属製で低翼単葉、油圧式の引っ込み脚、始めてのファウラーフラップ、可変ピッチプロペラを採用、大き目の主翼に対し、スマートな胴体であった。 試作第一号機は中島光2型空冷エンジンを搭載して1937年1月に初飛行した。 当初は油圧式システムに問題があったがすぐに解決し、試作機は要求仕様をはるかに上回る時速352kmを出した。 しかし本機に盛り込まれた数々の新機軸は海軍関係者をして問題多発の要因となると危惧された。 はたして油圧式の主翼折りたたみシステムは2号機から手動式に変わり、ファウラーフラップは従来型のものに換えられた。 さらにいくつかの改良を施された本機は三菱のB5Mとの競争に勝ち、1937年11月97式艦上攻撃機(B5N1)として採用されたのである。  B5N1は最初中国戦線に投入され96式戦闘機の護衛のもとに行動し、中国戦闘機隊の弱体もあってその性能をフルに発揮した。 太平洋戦争開始時にはすべての艦上攻撃部隊はB5Nに置きかえられており、真珠湾攻撃を始めとしてその後の作戦に大活躍、米空母レキシントン、ヨークタウン、ホーネットの撃沈に大きな役割を務めたのである。 しかし戦争後半以降になってアメリカ戦闘機の反撃が激しくなると、貧弱な防御火器、防弾板やセルフシーリング燃料タンク欠如などの弱点がもろに露呈され損害が急増し、1944年フィリピン沖作戦を最後に後方任務に後退した。 その後は船団護衛、対潜哨戒などの任務につき、戦争終了間際にはレーダーや磁気探知機を搭載したものもあった。

 
性能諸元(B5N2)

形式: 艦上攻撃機   エンジン:中島NK 1B 栄11空冷1,000馬力   最大速度:378km/時(高度 3,600m)  巡航速度 260km/時   航続距離:1,990km   上昇時間:7分40秒(3,000mまで)   上昇限度:8,260m   自重:2,279kg   全備重量:4,100kg   全幅:15.52m   全長:10.3m   武装:7.7mm 旋回式機関銃1挺、爆弾800kg   生産台数:1,149

参考文献

Elke C. Weal “Combat Aircraft of World War Two”, Arms and Armour Press, London 1977
Enzo Angelucci & Paolo Matricardi “World War 2 Airplanes”, Rand McNally, Chicago 1978
Bill Gunston “Fighting Aircraft of World War 2”, Prentice Hall Press 1988
Bernard Fitzsimons ed. “The Illustrated Encyclopedia of 20th Century-Weapons and Warfare Vol.3”
Chris Bishop ed.“The Complete Encyclopedia of Weapons of World War 2”, Prospero Books, 1998
“日本海軍機の塗装とマーキングー爆撃機編” モデルアート4月号臨時増刊、1993
佐貫亦男監修“第二次大戦機”徳間書店、1988
Rene J Francillon “Japanese Aircraft of the Pacific War” Putnam Aeronautical Books 1988
W. Green & G. Swanborough “Japanese Army Fighters World War 2 Fact Files”
航空情報編 「日本軍用機の全貌」
岡村純他「航空技術の全貌」原書房