１９３０年代の初め、日本海軍は軽巡洋艦に搭載できる夜間偵察用の飛行艇の仕様を発布した。　要求は低速で長時間飛行が可能なことであった。　この仕様に基づき設計されたのが愛知九六式偵察機（E10A1）で１９３４年から１９３７年の間に１５機が作られた。　これに続いて昭和１１年（１９３６）、海軍より愛知、川西の両社に対して九六式水偵に代わる夜間偵察機の試作指示があった。　愛知は従来機種を発展させたオーソドックスな複葉型式を採用したのに対して、川西は独創的なガル翼の単葉機で張り合った。　愛知は昭和１２年（１９３７）に試作機を完成させ、テストの結果川西機より操縦性、安定性、航続距離に勝るとして翌年九八式水上偵察機として正式採用された。　胴体は全金属製、翼は金属製の骨組みに羽布張りで、主翼は後方に折りたためるようになっていた。　乗員は３人。以後海軍の夜間偵察機は愛知が独占した形となったが需要が少なくまたフロート付の水上機の発達により海軍の小型夜間偵察機の開発は本機をもって終わりとなった。 　九八式水偵は日華事変の末期から太平洋戦争の初期に少数機が哨戒任務に使われたほか、連絡、輸送用にも利用された。 連合軍のコードネームはローラである。