川西 九四式水上偵察機(E7K2)

画像をクリックして拡大

モデルは ハセガワ製 1/72

 昭和7年(1932年)、日本海軍は旧式化していた90式水上偵察機の後継機種を開発すべく要求仕様を出した。 これを受けて川西航空機と中島飛行機が計画案を提出した。 川西航空機のものはE7K1の型名を与えられ、昭和8年(1933)に初飛行した。 構造は金属製骨組みに羽布張りでいわゆる下駄履きと呼ばれるフロートが二つついたタイプで、エンジンは液冷12気筒500馬力で2翔の木製プロペラを駆動した。 乗員はパイロット、偵察員、無線連絡員の3人、武装は7.7mmの固定式機関銃1挺に、無線連絡員が操作する旋回式機関銃が1挺、さらに60kg爆弾2個である。 機体は海軍に引き渡され、中島飛行機の試作機と比較テストされた結果、E7K1が優れているとの評価を受け、昭和9年、九四式水上偵察機一型として量産に入った。 生産は川西航空と日本飛行機の両者で行われた。 生産の途中からエンジンは600馬力になり、プロペラも4翔のものに変わった。 E7K1は取り扱いやすく、信頼性が高かったので海軍のパイロットから好まれカタパルト発射として戦艦、重巡洋艦、水上機母艦への搭載はもちろん水上基地用としても多方面で使われた。 艦艇搭載時には主翼を後ろに折りたたむことができた。 3年後三菱の空冷エンジン、瑞星11(870馬力)に換装したE7K2 が登場し、旧式化しながらも昭和18年(1944)まで第一線で使われ、複葉の水偵では日本で一番寿命の長い機体となった。 横須賀からタイのバンコックまでノンストップの長距離飛行をしたことがあり、単発機としては驚異的な滞空時間を注目された。 連合軍によってつけられたコードネームは“アルフ”である。 

 
性能諸元(E7K2)

形式: 三座水上偵察機   エンジン:三菱瑞星11空冷 870馬力   武装:7.7mm 固定式機関銃1挺 7.7mm旋回式機関銃1挺   最大速度:275km/時(高度2,000m)  巡航速度:185km/時   上昇時間:9分6秒(3,000mまで)   上昇限度:7,600m   航続距離:1,845km   自重:2,100kg   全備重量:3,300kg   全幅:14.0m   全長:10.5m   生産台数:約530

参考文献

Elke C. Weal “Combat Aircraft of World War Two”, Arms and Armour Press, London 1977
Ed.: David Donald “Encyclopedia of World Aircraft” Prospero Books 1999
William Green “War Plane of The Second World War Vol.6” Doubleday & Company, 1960
Christy Campbell “Air War Pacific”, The Hamlyn Publishing Group Ltd., 1991
佐貫亦男監修“第二次大戦機”徳間書店、1988