日本海軍は潜水艦に水上偵察機を搭載するというアイデアに真剣に取り組んでおり、1920年代の終わりからそのアイデアに沿った水上偵察機の試作をしていた。 1934年に大型潜水艦の開発を始めたのに伴い、それに搭載する偵察機の設計を、昭和6年(1931)に航空機の製作に乗り出した渡辺鉄工所にその飛行機を設計する機会が与えられた。 渡辺鉄工所はそれまで海軍の航空技術廠の設計になる航空機の製作はしていたが、自分で設計するのは初めてであった。 その結果が複座の小型偵察機E9Wである。 狭い潜水艦に収容できるように分解、再組み立てが容易にできるよう配慮されていた。 分解に1分半、組み立てに2分半しかかからなかったという。 初飛行は1935年、イー5潜水艦での搭載テストが成功裡に終わり、海軍九六式水上偵察機として正式採用された。 試作機の他に32機が生産され、潜水艦に搭載された。 最終機の生産は1940年である。 1937年、E14Yに切り替えられることが決定されたが、E9W1は太平洋戦争が勃発した時点でもなお14機が第一線の潜水艦に配備されていた。 連合軍のコードネームは“スリム”
形式: 潜水艦搭載水上偵察機 エンジン:日立GK2天風 空冷 300馬力 武装:7.7mm 旋回式機関銃1挺 最大速度:232km/時 巡航速度 148km/時 上昇時間:9分41秒(3,000mまで) 上昇限度:6,750m 自重:880kg 全備重量:1,250kg 全幅:10.0m 全長:8.0m 生産台数: 35
Elke C. Weal “Combat Aircraft of World War Two”, Arms and Armour Press, London 1977
William Green “War Plane of The Second World War Vol.6” Doubleday & Company, 1960
Chris Bishop ed.“The Complete Encyclopedia of Weapons of World War 2”, Prospero Books, 1998
Robert C. Mikesh “Japanese Aircraft 1910-1941” Putnam Aeronautical Books 1990