一般的にいって欧米の日本機にたいする評価はあまり高くない。　陸軍の「疾風」でも日本では最高の戦闘機といった風に「日本では」の注釈がつく。　そんな中で文句なしに世界最高と折り紙をつけられているのがこの川西の二式大艇である。　　戦争中アメリカは本機のサンプルを手に入れるのにやっきとなったが果さず、戦後進駐してきたときにすぐに本機を探し求めている。　四国の高松で発見され、すぐアメリカ本国に持ちかえりテストされた。　その結果アメリカの同タイプのコンソリデーテッドＰＢ２Ｙより時速が80kmも速く、離水に要する滑走距離は非常に短く、防御火力に優れ、防弾も十分で荒天でも楽々と着水ができた。　本機は疑いなく世界でもっとも速く、もっとも防備が優れた飛行艇であると評価されている。 　１９３８年、九七式大艇の後継機として海軍の１３試計画に応じて設計が始められた。 海軍の要求は従来機種より、速度は３０％以上速く、航続距離は５０％増し、しかも良好な操縦性を有することなど厳しいものがあったが、これに応えて川西が生み出したものがすっきりした流麗な姿態を持つモデルH8K1である。　第一号機は１９４０年１２月に完成したが、九七式大艇にくらべ著しく水上安定性を欠いていた。　種々の改良の結果、翌年本機は二式大艇として正式に採用された。 　実戦のデビューは１９４２年３月、マーシャル群島のウオッゼ基地にあった３機の大艇が長躯3,800kmを飛んでハワイのオアフ島を夜間爆撃であった。　このときは厚い雲にさえぎられ爆撃の効果は上がらなかった。 　防御火器は機首と胴体側部の7.7mm機関銃４挺、尾部と胴体後部に20mm機関砲と重装備でしかも防弾も十分であった。　２型では20mm機関砲を５門も備える重装備であった。　その頑丈さは従来の日本機の常識を超え、１９４４年夏、ボニン島近くで１機の二式大艇を４機のアメリカ戦闘機がよってたかって攻撃し、ようやく撃墜したがそのためには機銃弾を５５００発消費したという。