1942年当時、アメリカ陸軍は主力戦闘機としてはロッキードP-38とリパブリックP-47を柱に計画していたためイギリス購買使節団の要請で開発されたノースアメリカンP-51ムスタングについては冷淡な態度をとっていた。 しかしP-51がイギリスから最初から非常な好評を得ていたことを無視できなくなっていたこと、またノースアメリカン社からの強い売り込みもあって軍もその気になったが、戦闘機としての予算が獲得できなかった。 陸軍のオリバー P エショルズ将軍らが攻撃機用の予算にまだ余裕があったのに目をつけノースアメリカン社に500機の地上攻撃機タイプを発注した。 これはA-36の型式を与えられ、12.7mm機関銃6挺のほか急降下爆撃用に主翼下にエアーブレーキを備え、250kg爆弾を2個懸架できるようになっていた。 地上攻撃が目的であるからエンジンは低空で能力を発揮できるアリソンV-1710-87(1,325馬力)でキャブレターの空気取り入れ口には砂除けのフィルターが追加された。 アメリカ軍機としての実戦デビューは1943年4月の北アフリカ作戦で、このときA-36はきわめて有能な武器であることを実証した。 ダイブブレーキの利き方にくせがあったがパイロットたちはすぐに要領を呑み込み4,000mの高度からほとんど垂直に急降下し高い命中率を上げることができたのである。 また地上攻撃だけでなくA-36は84機の敵機を撃墜するという戦果もあげている。
A-36は有能な地上攻撃機であるという評価は確立したもののやはり弱点は胴体下部につけられた冷却器であった。 これが地上砲火に対して弱かったのである。 1944年6月以降は対地攻撃はおもにカーチスP-40とリパブリックP-47が担当するようになった。 アリソンエンジン装備のP51タイプの生産は合計1,579機で終了し、後はロールス.ロイス.マーリンエンジンをアメリカ生産にしたパッカード.マーリンエンジンに切り替えられた。
形式:単発地上攻撃機 エンジン:アリソン V1710液冷12気筒1,325 馬力 武装:12.7mm機関銃6挺、爆弾454kg 最大速度:590km/時 巡航速度:400km/時 上昇限度:7,650m 航続距離:885km 全備重量:4,535kg 全幅:11.28m 全長:9.83m
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