アメリカのマーチン社が製造した航空機の中でもっとも大量に生産されたのがこのB-26双発爆撃機である。 1938年、当時の急速な技術の発展を見たアメリカ陸軍は革新的な爆撃機の開発を計画した。 要求された仕様は最高速度520km/時、航続距離2900km、爆弾搭載量2000kgでセルフシーリング燃料タンク搭載というものであった。 戦雲たれこめるヨーロッパの情勢から時間がなにより大切な時期であったので、アメリカ陸軍当局は設計図面だけで各社のコンペチションを行った。 マーチン社は本機の設計を若き技術者ペイトン.マグルーダーに託し失敗を恐れず当時の最新技術を盛り込むことを承認した。 コンペチションに参加した競合相手はノースアメリカン、ダグラス、コンソリデ―テッドといったそうそうたるメンバーであったがマーチン社が第一位をしめ201機の発注を勝ち取ったのである。
設計者マグルーダーは大胆な設計を行った。 胴体は円形断面を持ちこれ以上ないほどの流線型の形状であった。 アメリカ軍から出された仕様には主翼の翼面荷重にはなにも触れていないところに目を付け主翼を思い切って細く、面積を小さくして空気抵抗を減らし高速化をねらったのである。 このため離陸するのに長い滑走距離を要し着陸速度も160km/時と当時としては異常に大きかった。
初飛行は1940年11月。 実戦配備は1941年2月から始められたが高い着陸速度のためにパイロットの訓練に時間がかかった。 エンジンは2基のプラットアンドホイットニー R-288-5ダブルワスプ空冷1850馬力で、4翔プロペラを駆動した。 胴体内の爆弾倉に最大2189kgの爆弾を収容できた。 7.7mm機関銃1挺、12.7mm機関銃2挺を機首に、胴体後部に2連装の12.7mm機関銃銃座が設けられさらに尾部にも1挺の12.7mm機関銃が備えられた。 最初の量産機のうち52機はイギリスに送られマローダーという名前をつけられた。 最初の実戦参加はオーストラリア空軍に供給されたもので1942年4月、日本のラバウル基地に対する攻撃である。 その2か月後のミッドウェイ作戦でも少数機が参加したが見るべき戦果はあがっていない。
1942年4月から生産はエンジンが2000馬力のR-2800-41に換装されるとともに防弾と防御火器が強化されたB型に変わった。
高翼面荷重に慣れていないパイロットのため相次ぐ離着時の事故で多くの乗員の命が失われたことから”未亡人作り”と悪口をいわれた一方、熟練パイロットに操縦されればその高速を生かして敵戦闘機の迎撃をかわすことができ、アメリカ爆撃機の中では損失率が最小の結果を残して有用な爆撃機であると評価されもっぱらアフリカと地中海方面で活躍した。
形式: 双発爆撃機 エンジン:プラットアンドホイットニー R-2800-41 空冷2,000馬力2基 最大速度:510km/時(高度 4,470m) 巡航速度 418km/時 航続距離:1,850km 上昇時間 12分00秒(高度4,572mまで) 上昇限度:7,163m 自重:10,152kg 全備重量:15,513kg 全幅:19.81m 全長:17.75m 武装:12.7mm 旋回式機関銃6挺 爆弾 2,539kg 生産台数:4,716
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