ダグラス XB-42 

画像をクリックして拡大

モデルは VP CANADA製 1/72
バキュームフォームキット

 XB-42は登場の時期が遅すぎたため生産に移されることがなかったが、疑いなくダグラス社のもっとも斬新なデザインであり、ピストンエンジン装備の爆撃機としては驚異的な性能を誇った。 イギリスの傑作機モスキートB.XVIとほぼ同馬力のエンジンを搭載しながら爆弾搭載量は2倍で同じスピードを出し、 防御火器のないモスキートにくらべてXB-42は4挺の12.7mm機関銃を備えていた。  この画期的な航空機はダグラス社の自主プログラムとして始められた。 設計者バートンは双発で908kgの爆弾を積んで3,220km離れた目標を爆撃できる爆撃機を企画した。 二つのエンジンを胴体内に収容して主翼からエンジンナセルをなくせば空気抵抗は30%も減らせると計算した。 しかも4発のB-29と比較すれば整備員は半分ですみ、コストも3分の2ですむと計算した。 計画書は1943年5月に提出され、アメリカ陸軍の承認するところとなり2機の試作機を受注した。 第一号機は承認されてからわずか10ヶ月後の1944年5月に完成した。 XB-42はいくつかのユニークな構造を持っていた。 2基のアリソン V-1710-125sエンジン(1,325馬力)は胴体内操縦席のすぐ後方、中心線から左右それぞれ20度傾けて配置された。 反対方向に回転する2重プロペラが胴体尾部につけられ、動力はベルP-39で使われたものと同じ延長シャフトでにそれぞれのエンジンから伝えられた。 主翼は層流翼を採用し燃料タンクはその中に設けられた。 さらにGE製のリモートコントロールの12.7mm連装銃が両翼の後縁、補助翼とフラップの間に設けられた。 このような構造のおかげで双発でありながら、単発のジェット機のような余分なでっぱりのない空気抵抗の少ない機体ができたのである。 乗員は3人、爆撃照準手は機首、操縦士と副操縦士はそれぞれべつの風防の中である。 1944年5月4日、初飛行が行われ、直ちに本機の優秀性が認められた。 速度は計算値にぴったり合っていたし、航続距離、上昇力は計画以上であった。 反面、方向安定性が悪く、プロペラからの振動、両パイロット間の連絡のしづらさなどの欠点が指摘された。 これらの問題点は容易に改善され、8月に完成した2号機はカリフォルニアからワシントン間を飛行、平均時速は698kmという驚くべき記録を残した。 しかしこのころには戦争終結が目前であり、しかもジェット機の時代に移りつつあったのでこの優れた航空機も大量生産に移されることはなく、ジェットエンジン搭載のテストベッドとして使用されただけであった。 機体はいまワシントンのスミソニアン博物館に展示されてる。

 
性能諸元(XB-42)

形式: 双発爆撃機   エンジン:アリソン V-1710-125s 液冷1,325馬力2基  最大速度:660km/時(高度 7,145m)   巡航速度 502km/時   航続距離:2,895km  上昇限度:8,960m   自重:9,475kg   全備重量:16,194kg   全幅:21.49m   全長:16.36m  武装:12.7mm 旋回式機関銃4挺 爆弾 3,632kg  生産台数:2 

参考文献

Chris Bishop ed.“The Complete Encyclopedia of Weapons of World War 2”, Prospero Books, 1998
Rene Francillon “McDonnell Douglas Aircraft since 1920” Putnam Aeronautical Books 1979
F.G. Swanborough “United States Military Aircraft since 1909” Putnam 1963