リパブリック P-47D 

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モデルは AIRFIX製 1/72

 設計技師アレクサンダー.カートべりによって開発が始められたセバスキーP-35に続くリパブリックP-43戦闘機シリーズはP-47サンダーボルトによって頂点に達した。 P-43戦闘機に続く機種としてカートべりの設計チームは二つの案を提出し、両方ともアメリカ陸軍航空部の承認するところとなった。 P-44の型式名称を与えられた第一の案は従来あったP-43戦闘機をベースにしたものでプラットアンドホイットニーツインホーネットエンジンあるいはダブルワスプを搭載するものであった。 第二の案はXP-47の型式名を与えられアリソンV-1710液冷エンジン搭載でずっと小型で軽量のものであった。 しかしながら1940年になってヨーロッパにおける戦乱の教訓に基づいてアメリカ陸軍航空部は要求仕様の全面的な見直しを迫られたのである。 すなわち十分な高空性能、640km/時以上の最高速度、強力な武装さらに味方爆撃隊を敵地深くまで護衛するための航続距離などである。 これらの要求仕様に答えるには在来機種の改良などではとうてい不可能であり、過給機を備えた格段に大馬力のエンジンを備え、セルフシーリング燃料タンクさらに高度の運動性を持つ必要があることは明らかであった。 カートべりはただちにこれに応じて過給機付きのダブルワスプエンジンを搭載、8挺の機関銃を備え従来の倍に近い重量を持った重戦闘機を提案したのである。 これがあらたにXP-47として承認され直ちに1機の試作機と773機の生産オーダーというアメリカ陸軍機としては従来にない大受注をした。  1941年5月、受注から1年も経たないうちに試作機XP-47Bが初飛行した。 新戦闘機は重量が5.5トンを超えるという巨大であるだけでなく、高空性能改善のため排気タービンを備えた初めての機体であった。 排気タービンそのものは胴体後部に配置されエンジン下部から出る高温の排気ガスはタービンの羽根を回し圧縮された空気がエンジンに供給されるしかけであった。 エンジンは巨大なプラットアンドホイットニーXR-2800-21 空冷18気筒(2,000馬力)で、大出力エンジンの能力を最大限に引き出すため4翔の巨大なカーチス社のプロペラを備え主翼には8挺の12.7mm機関銃(弾数各銃425発)という重武装であった。 単座ではあったが操縦席は広く二人が並んで座れるくらいの余裕があった。 逆にスペースが十分にあったため設計は楽であった。  P-47の実戦参加は1943年1月、イギリス駐在のアメリカ第8空軍である。このとき最高速度は690km/時に達していたが航続距離が長距離の爆撃隊援護には不足であったので燃料タンクに改良が加えられ、さらに落下式タンクも取り付けられた。 さらにパイロットに対する防弾版も強化されたうえに主翼構造も強化され454kg爆弾が両翼に、227kg爆弾が胴体下に取り付けられるようになった。 単発単座戦闘機でありながら爆弾搭載量は合計で1.5トンにも及び日本の重爆なみの搭載量であり、対地攻撃に猛威をふるうようになったのである。 P-47Dシリーズは高度9,145mでの最高速度が697km/時に達し、B-17やB-24の爆撃機編隊にとってはありがたい護衛になった。   P-47Dは東南アジア戦線には1943年6月、地中海方面には11月、中国戦線には1944年4月に姿を現しその頑丈さと重武装で猛威をふるったのである。

性能諸元(P-47D)

形式: 単座戦闘機   エンジン:プラットアンドホイットニー R-2800-21空冷 2,300馬力   武装:12.7mm 機関銃8挺、爆弾1,134kg   最大速度:697km/時(高度9,144m)  巡航速度 563km/時   上昇時間:11分(6,000mまで)   上昇限度:12,800m   航続距離:2,880km(最大)   自重:4,491kg   全備重量:6,804kg   全幅:12.43m   全長:11.01m   生産台数:15,634(各型合計)

参考文献

Elke C. Weal “Combat Aircraft of World War Two”, Arms and Armour Press, London 1977
William Green “War Plane of The Second World War Vol.4” Doubleday & Company, 1960
Bernard Fitzsimons ed. “The Illustrated Encyclopedia of 20th Century-Weapons and Warfare Vol.19”
Chris Bishop ed.“The Complete Encyclopedia of Weapons of World War 2”, Prospero Books, 1998
Enzo Angelucci & Paolo Matricardi “Combat Aircraft of World War 2 1933-1937”
F.G. Swanborough “United States Military Aircraft since 1909” Putnam 1963
William Green & Gordon Swanborough “Flying Colors” Salamander Books Ltd.,London, 1981