1936年、ボーイングB-17がまだ開発途上にあるとき、これを護衛する長距離戦闘機の必要を感じたアメリカ陸軍はFM(Fighter Multiplace-多目的戦闘機)の概念を持ち出した。 これにロッキードとベルの2社が応じたが、ベルのアイデアが選定されXFM-1として試作機の契約が結ばれた。 XFM-1はどこから見ても常識を破ったデザインであった。 大きさは中型爆撃機に匹敵し、2基の過給器つきアリソン V-1710-13 液冷エンジン(1,150馬力)は後押し型で3翔のプロペラを駆動した。 エンジンナセルの前部は透明風防で覆われ銃手の座席が設けられた。 武装は37mmマドセン機関砲2門と7.7mm機関銃2挺という型破りなもので、さらに7.7mm旋回式機関銃が操縦席の後部の座席に備えられ、15kg爆弾を20個つりさげることができた。 乗員は5人でお互いは電話で連絡できるようになっていた。
初飛行は1937年9月。 若干のトラブルはあったが、翌月には陸軍に正式に引き渡された。 整備のしにくさで評判はあまりよくなかったが、それでも1938年には陸軍から13機を受注した。 この型破りの戦闘機はある種のセンセーションをまきおこし、1940年にルーズベルト大統領をはじめ政府の高官の前でデモンストレーションが行われたもののしょせん実用になるしろものではなかった。 なにしろ護衛すべきB-17爆撃機よりも時速が50km近く遅く、宙返りすらできない戦闘機であったのである。 しかもエンジンの冷却に問題があり自力で滑走できず、車に牽引してもらわねばならないありさまであった。 1942年1月には飛行可能なXFM-1は陸軍の技術学校に引き渡され教材として使われたあとすべてがスクラップにされた。
形式: 多目的戦闘機 エンジン:アリソン V-1710-13 液冷過給器つき 1,150馬力 2基 最大速度:434km/時(高度 3,840m) 巡航速度 393km/時 航続距離:1,285km 上昇限度:9,300m 自重:6,073kg 全備重量:7,852kg 全幅:21.128m 全長:13.66m 武装:37mm 機関砲2門、7.7mm 機関銃2挺、7.7mm 旋回式機関銃1挺 生産台数: 13
Bernard Fitzsimons ed. “The Illustrated Encyclopedia of 20th Century-Weapons and Warfare”
F.G. Swanborough “United States Military Aircraft since 1909” Putnam 1963
Alain. J. Pelletier “Bell Aircraft since 1935” Putnam Aeronautical Books 1990
O.G.Thetford & H.J.Cooper “Aircraft of the Fighting Powers”