1940年、ヨーロッパではすでに戦争が始まっているとき、遠からずアメリカも戦争に巻きこまれることを予想したアメリカ陸軍は、パイロットの拡張プログラムの一環としてアメリカ陸軍は当時生産が始まったばかりのB-25,B-26爆撃機の搭乗員養成のため双発の練習機の必要に迫られた。 この目的のためセスナAT-8を大量に買い入れていた。 しかしAT-8は飛行安定性が良すぎ、もっと実際の爆撃機のフィーリングに近いものが要求された。 これに応えてカーチス社が設計したものがAT-9で、1941年から1943年にかけて作られた。 ジープというニックネームで呼ばれたが、これは当時の流行漫画に出てくる動物の名前からとったものであるが、この名前は同時期に現れた小型の万能軍用車にもつけられ、世の中にはこの方が知られるようになった。 AT-9は複座で教官と生徒が横に並んで座るようになっていた。 設計段階のうちからアルミ合金の不足が懸念されたので試作機は溶接鋼管の骨組みに羽布張りという昔の構造で作られたが、実際の量産型は全金属製となっている。 B-25やB-26の生産が軌道にのってくると余剰機を訓練用に回すことができるようになり、AT-9の必要性が少なくなってきた。 実際の爆撃機を使ったほうが生徒を多く乗せることができ訓練効率がよくなったからである。 戦後になってもAT-9の設計の特殊性のため利用用途が限られており重用されなかった。
形式: 高等練習機 エンジン:ライコミング R-680-9s 空冷295馬力2基 最大速度:317km/時 巡航速度 282km/時 航続距離:1,207km 上昇時間:8分36秒(3,048mまで) 上昇限度:5,791m 自重:2,011kg 全備重量:2,749kg 全幅:12.29m 全長:9.65m 生産台数:791
“Jane’s Fighting Aircraft of World War 2”, Bracken Books, London 1989 Peter M. Bowers “Curtiss Aircraft 1907-1947” Putnam 1979 F.G. Swanborough “United States Military Aircraft since 1909” Putnam 1963 Chris Bishop ed.“The Complete Encyclopedia of Weapons of World War 2”, Prospero Books, 1998