1938年グラマン社はアメリカ海軍に対して従来の考え方をやぶる新しい双発戦闘機開発の提案を行った。 設計案は1,200馬力のライトR-1820エンジンを2基搭載、二つのプロペラの慣性を打ち消すためにたがいに逆回転をさせて運動性を改善し、高速を出せるというものであった。 型式名はXF5Fが与えられた。
XF5Fは低翼型で主翼の前縁が胴体の前に出るといった奇抜なスタイルであった。
初飛行は1940年4月。 テスト飛行で判明した不具合の改善は翌年1941年7月に完了した。 テストパイロットによればXF5Fは二つのプロペラが互いに逆回転してトルクを打ち消すシステムの効果は絶大で操縦しやすく視界も良好であった。 しかし海軍上層部は修理部品供給、サービス体制などから従来型のF4Fワイルドキャットを正式採用することに決定したのである。
XF5Fのテストはさらに続けられたが、判明した問題をすべて改善するころには1942年になっていた。 グラマン社はこのころにはさらに前進した双発艦上戦闘機XF7Fの開発が進められていたのである。 XF5Fのテストはなおも続けられていたが1944年終わりに胴体着陸をせざるをえない事態に陥った時点ですべてのテストはキャンセルされた。
グラマンのテストパイロットのクロムリンが1985年にグラマン社の社長ジョージ。スカラに送った手紙では”XF5Fで当時の戦闘機イギリスのスピットファイア、ハリケーン、アメアメリカのP-40,P-39,XF4Uなどとくらべてデータ上はXF5Fが断然優れていたと述べている。
なおグラマン社の戦闘機はF4Fワイルドキャットに始まってヘルキャット、タイガーキャットなどといずれもネコ科動物のニックネームが付けられているが、XF5Fにはなぜかスカイロケットという猫とは関係のない名前がつけられている。
形式: 双発艦上戦闘機 エンジン:ライトXR-1820-40/42空冷1,200馬力 最大速度:616km/時(海面) 航続距離:1,800km 海面上昇率 1,200m/分 上昇限度:11,000m 自重:3,600kg 全備重量:4,600kg 全幅:12.80m 全長:8.76m 武装:12.7mm機関銃4挺 爆弾 150kg 生産台数:1
Elke C. Weal “Combat Aircraft of World War Two”, Arms and Armour Press, London 1977
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鈴木五郎 “グラマン戦闘機” サンケイ出版 第二次大戦ブックス