1932年夏、二コライ.N.ポリカルポフは2種類の新型戦闘機の設計に着手した。 ひとつはTsKB-12の型名で呼ばれた後のI-16,もうひとつがTsKB-3、後のI-15である。 TsKb-3の初飛行は1933年10月。 木金混合の構造で、エンジンはアメリカのライト.サイクロン SGR-1820F3を模倣した700馬力のM-25、上部主翼はガルタイプで中央付近で折れ曲がり、胴体に直接取り付けられる独特の構造であった。 このためパイロットの前方視界、特に上方視界が通常の複葉機に比べて格段に改善されていた。 最初のテスト飛行で時速368kmを記録、また360度のターンにわずか8秒しかかからないなど素晴らしい運動性を示した。 しかも操縦席の後ろには鋼鉄の防弾板を備えていた上7.7mm機関銃を4挺という当時の標準であった2挺の倍という重武装であったため、TsKb-3は直ちにI-15の型式名で量産に移された。 1935年11月には14,300mの高度世界記録を樹立している。 1934年後半に第一線に配備され始めるとI-15はロシア語でかもめを意味するチャイカという愛称で呼ばれた。 1936年始めまでには384機のI-15が生産されたが、パイロットの視界を改善するはずのガルタイプの主翼は離着陸時の視界を妨げ、事故を頻発した。 このため一時は製造中止にまでなったが、1937年にガル翼を従来の平坦な主翼にしたI-15BISが開発されるに及んで生産を再開した。 550機以上のI-15はスペインに送られて共和国軍の側で、相手のドイツ製のハインケル51戦闘機を問題にもしない活躍をし、チャト(鼻ぺしゃの意)という愛称で親しまれた。 この事実に驚いたドイツは当時出来たばかりでテスト中であったメッサーシュミットBF109Dを慌てて送り込んだくらいである。 1939年11月のソ連によるフィンランド侵攻作戦では、旧式化していたがスキーをつけ、主に対地攻撃に用いられた。 また改良型であるI-15BISは中国に大量に送られたほか、1939年のソ満国境で起こったノモンハン事変で使われたが、日本の九七式戦闘機相手では旧式化が覆うべくもなかった。
形式: 戦闘機 エンジン:M-25V 空冷 750馬力 武装:7.7mm 機関銃4挺 最大速度:370km/時(海面) 巡航速度:280km/時 上昇時間:6分42秒(5,000mまで) 上昇限度:9,000m 航続距離:770km 自重:1,310kg 全備重量:1,730kg 全幅:10.2m 全長:6.28m 生産台数:3,142
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MACH 1 (l’encycropedie de l’aviation) Editions Atlas
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