1944年、ドイツにジェットエンジンを搭載した戦闘機が近々登場するとの情報を受けたソ連はジェットエンジンの開発を急ぐとともに現用技術を最大限に生かした高性能戦闘機の開発を急ピッチですすめることになった。 現用のレシプロエンジンに補助推進機を追加することが考えられたのである。 その成果の一つがミコヤン.グレビッチ設計局が設計したI-250である。 全金属製低翼型で薄型の主翼を持つ本機はクリモフ VK-107R 12気筒エンジンを機首に備える点では普通の設計と同じであったが、エンジンから後方に伸ばした延長シャフトで7つの燃焼室を持つ圧縮機を駆動し、ジェット出力を尾部から噴出する方式であった。 この補助推進機はVRDKと呼ばれ900馬力相当の推進力を10分間だすことができた。 同時期に開発されたスホーイ Su-5 戦闘機にも採用された。 エンジンのすぐ後ろに圧縮機を配置する関係で操縦席はずっと後ろに置かれた。 武装は23mmNS-23機関砲1門と12.7mm2
挺を機首に備えていた。 この複合エンジンは2800馬力相当の出力を出し、1945年3月に行われた初飛行に続く飛行テスト中に時速825kmを記録した。 これはドイツのメッサーシュミットMe262より時速40kmほど遅いだけであった。
しかしこの時点ではソ連軍はドイツ深く侵入してMe 262を入手しジェットエンジンがはるかに将来性があることを認めI-250に対する関心は急速に冷めたのである。 I-250は1945年後半から少数機が作られ、MIG-13としてバルチック艦隊に配属されて1950年まで使われた。
形式: 単座戦闘機 エンジン:クリモフ VK107R V-12 液冷 1,650馬力ならびにVRDK圧縮機推力300kg 最大速度:620km/時(海面) 825km/時(高度 7,800m) 上昇時間:3.9分(5,000mまで) 上昇限度:11,900m 航続距離:1,820km 全備重量:3,680kg 全幅:9.5m 全長:8.18m 武装:20mm機関砲4門 生産台数: 2
Bill Gunston "Mig Aircraft since 1937" PUTNAM, 1998
Bernard Fitzsimons ed. “The Illustrated Encyclopedia of 20th Century-Weapons and Warfare” Vol.13
Chris Bishop ed.“The Complete Encyclopedia of Weapons of World War 2”, Prospero Books, 1998
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