ソ連は早くからロケットエンジン推進の飛行機の開発には熱心であった。 1944年、ドイツでメッサーシュミットMe163出現の報に接するとこれと同等の戦闘機の開発が計画されたがしばらくは具体的な軍からの要求はなかった。 終戦になってMe163の全貌が明らかになりそのサンプルが手に入るとミグ設計局は2機の試作機の発注を受けた。I-270の型名を与えられた本機はいっさい冒険的なことはせず、できるだけ無難な方向でまとめることを要求された。ロケットエンジンはダシュキン/グルシュコ RD-2M-3V(推力1,450kg)に小型エンジン(推力400kg)が併設されていた。主ロケットの持続時間は4.5分であったが、滑空状態に入り小型ロケットだけを使うと9分間の運転ができた。
機体はジュラルミン製できわめて簡素な構造であった。 操縦席は胴体の前部につけられたため視界がよく、完全な与圧タイプになっていた。 操縦席の後方はほとんどロケット燃料をおさめるタンクで占められていた。 Me163と同じく電力を得るために機首に風力発電ようの小さなプロペラが設けられていた。 武装は機首に2門のNS-23 23mm機関砲が備えられた。 何人かのパイロットが選ばれ、飛行感覚を同じにするために余分な重量を載せたYak-9を使って飛行訓練が行われた。 1946年、第一号機が完成したときはロケットエンジンが間に合わなかったのでTu-2爆撃機に曳航されたグライダーとして行われた。 ロケットエンジン搭載の本格的な初飛行は1947年1月に行われたが、試作機は2機ともテスト飛行中に事故で損傷してしまったあと誰も修理をするものがないままこのプロジェクトは立ち消えになってしまった。 ジェット機が大量生産に入っていた時代であるから、この種の飛行機は用なしになっていたのである。
形式: 単座ロケット戦闘機 エンジン:ダシュキン/グルシュコ RD-2M-3V(推力1,450kg+400kg) 最大速度:1,000km/時(海面) 928km/時(高度10,000m) 上昇時間 2分22秒(10,000mまで) 上昇限度:17,000m 自重:1,546kg 全備重量:4,120kg 全幅:7.75m 全長:9.92m 生産台数:2
Bill Gunston "Mig Aircraft since 1937" PUTNAM, 1998
Chris Bishop ed.“The Complete Encyclopedia of Weapons of World War 2”, Prospero Books, 1998
William Green "War Planes of the Second World War- Fighters" Vol.3 MacDonald
Yelfim Gordon "Soviet X-Planes" Motorbooks International, 1992
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